舞妓+芸妓+花魁÷3=SAYURI

  • Day:2006.02.08 23:36
  • Cat:書房
2月8日 (水)   晴れ   引き篭もり

SAYURI(原題: Memoirs of a Geisha)って、てっきり旧正月前に終わったものだと思っていたら、中環のIFCでまだやっているらしいことが発覚したので、昨日は映画が安かったし、することも特にないので観に行ってみた。
映画とは関係ないのだけれども、春みたいな陽気で気持ちが良かったので、サンドイッチを買って外で食べた。天気は気持ちが良かったけれども、18ドルもしたサンドイッチはそれほど美味しくもなく、もうあの店では買わないぞと心に誓う。
映画は2時から。私が1時過ぎにチケットを買ったときにはまだ半分も埋まっていなかったのに、上映5分前に映画館に入ったら、8割くらい客が入っていてちょっとびっくり。もう公開から一ヶ月くらいになるのに、まだ一日3回は上映しているし、人気映画なのかしら。
香港の映画館が指定席制で良かったよ。あまりスクリーンに近い席だと、特にカメラワークの激しい映画では、酔って気分が悪くなることがある。乗り物酔いみたいな感じか。その昔、「恋する惑星」か「天使の涙」のどちらかを前から3列目くらいの席で観たときには本当に気分が悪くなった。ウォン・カーワイ作品は要注意だ。

んで、映画。

Memoirs of a Geisha
孔雀がいます。
日本に孔雀は棲息していませんが、
これはお花見の小道具の一つでしょうか。

あらすじは、ありがちな「貧しい家庭の女の子が身売りに出されて苦労を重ねながらも芸者として成功する」という、サクセスストーリー。何の工夫もない。つまらん。ちょっとくらいひねってほしかった…と思ったら、そう言えば、最初さゆり(その頃はまだ千代と呼ばれていた)は置屋で問題ばかり起こしていて、どんどん借金が膨らむばかりなので、芸者になるための稽古はやめて置屋の下働きに徹するという流れがあったことを思い出した。まあ、いろいろとあって結局は芸者への道を歩むわけなんだけれども。しかし、これはまあ原作がそうなんだから、映画制作者のほうの責任でもない。

さて、たった一枚のスチールであれだけ辛口に批判した私ですが、映画の感想は、★☆☆☆☆ってところか。監督のロブ・マーシャルって、「Chicago」を撮った人だけれども、あっちは良かった。面白かった。でも、これは…。

この狭く浅い描き方はなんなんだ。約2時間半もあるのに、どうしてもっと深く踏み込めなかったんだろう。これは要するに、監督のロブ・マーシャルと脚本家の日本への理解があの程度だったということだろうな。「ドキュメンタリーを撮るつもりはなかった」とか「これはイメージの世界」とか、商業映画を撮る監督の台詞か。一方で「本当の芸者の姿を世界に伝えたい」とか言うんだから、矛盾にもほどがあるってもんじゃないか。

着物の着付け、髪型、所作、会話の運び方とか、そういう小道具的な部分は、まあ「所詮ハリウッド映画だからな」と一万歩くらい譲ってみるとしても、映画全体の陳腐さは否めない。結局最後はラブストーリーになってしまって、めでたしめでたし、チャンチャン♪で終わってしまった。製作者側の意図した「本当の芸者の姿」って、「旦那獲得に燃える女」ってこと…?シンデレラを目指してまーすってこと?それでは本当の舞妓・芸者さんたちに失礼ではないかしら。それとも、ああいう時代に舞妓になる女の子たちというのは、みんな身売りされてきて、裕福な旦那をみつけて楽な生活をするというところに意欲を燃やしていたのかしら。
アメリカ映画だから、やっぱり「愛」というテーマも引っかけたかったんでしょうが、花柳界の文化がよく分からない上、無知と無関心と誤解の上に成り立った付け焼刃的な知識しかないと、こういう描き方しかできないんだろうか。

「本当の芸者の姿を世界に」と言うわりに、どうやって舞妓になり、芸者になるのかがさっぱり描かれていない。明けても暮れてもお稽古、お稽古という様子がなくて、さゆりはほんのちょっと稽古しただけであっと言う間に舞妓デビューした。しかも、半玉さん時代はないようで、いきなり上下の唇に口紅塗ってた。2時間半もあるんだから、もっと時間配分を上手くやって、どれだけ稽古を積んで舞妓になるのかとか、芸者になってからも芸の稽古には終わりがないこととか、そういう姿も描くべきだったと思う。それとも昭和初期はああだったのか。
あと、舞妓さんが芸者になるのと水揚げって、別物ではなかった?それとも昭和初期くらいはそうだったのかな?

小さいところでは、もう「あ~あ…」と溜息を吐かずにはいられない。
英語の台詞もなぁ。「中国系女優3人の英語は日本人のよりも自然で、その点日本人勢の力不足が見て取れた」というように書いている感想文(by日本人)が多いのだけれど、私はそうは思わなかった。みんな、同じくらい下手だった。下手と言うか、不自然だった。特にチャン・ツィイーと桃井かおり。英語という点で言えば、ミッシェル・ヨーが一番悪くなかったんじゃないか(上手かったわけではない)。
存在感があったのは、さすがのコン・リー。ただ、彼女が演じる初桃という芸者の人物描写があまりにも狭く浅すぎて、彼女の演技力が100%発揮されたとは言い難い。
桃井かおりも悪くなかった。表情とか雰囲気とか、さすが!と言いたかったけれども、いかんせん英語が…。英語に縛り付けられていたような感じもしたし、やっぱり母国語(または、そうと言えるくらい力まずに喋れる言語)以外での演技というのは難しいのだろうな。

着物の着方は、嘆かわしいの一言に尽きる。きれいな着物がもったいない…。どうしてあんなに、浴衣で寝た翌朝の姿みたいに着崩すんだろう。身体が細すぎるということも関係しているのかもしれないけれど、補正とかさ、色々手はあるじゃん。それから何度も言うようですが、どうしてお太鼓があんなにだらしないの?衿の抜き方もだらしがないしさぁ。バスローブ代わりのKIMONO ROBEじゃないんだから、ちゃんと着て欲しいわ、私。桃井さん以外(彼女は自分で着たらしい)は、注目される役柄の女性の着物が、みんな変だった。エキストラのは、おかしくないんだけれどねー。
髪形も変なんだけれど、これを言い出すとキリがない。

それにしても、「芸者は娼妓ではない」とか言ってるんだけれど、やっぱりなんだかんだ言ってもアメリカの製作者側で、芸者と花魁のイメージが重なってしまっているということは明らか。舞妓さんが一堂に会して舞を披露する「花おどり」という「都をどり」みたいなものが出てくるんだけれど、どう見てもあれは歌舞伎座でしょ?花道があった。で、その花道でさゆりがスポットライトを浴びて、紙吹雪の降りしきる中、花魁道中みたいな歩き方をする。その踊りも、あれは東洋をイメージした現代舞踊であって、日本舞踊じゃない。舞台で踊っている舞妓勢の頭にも、花魁みたいに簪が刺さってるし。
特にコン・リーの役に言えることだけれど、あの着物の着方、科の作り方、どうも製作側は吉原・花魁系の映画なんかを参考にしたんじゃなかろうかと思われる節がある。
さゆりが舞妓時代にお茶屋で舞を披露するときにスポットライト浴びてるのもなんなんだけれど、あの扇を多用する踊りは、あれはどう見ても中国舞踊だ。

言い出すとキリがないのでもうやめるけれども、やっぱりダメなんだなー。結局、東アジアの文化の多様性と相違が解ってないらしい。

日本人の鑑賞後の感想はいろいろなところで読む機会もあるだろうし、耳にもするだろうけれど、往々にして日本を勘違いしている欧米人がこの映画をどう見るのかが気になるところではある。そこで、アメリカのレビューをちょっと調べてみた。

Yahoo!Moviesの評価(いろいろな評論家の批評を平均化したもの)では「B-」。
「B+」が1つ、「B」が2つ、「B-」が4つ、「C+」が2つ、「C」が4つ。
どれを読んでも、結構辛口。日本人のレビューでよく言われている小道具的な問題もさることながら、その評価の低さはやはり内容の薄さが原因だった。「ゴージャスだけれど、それだけ」というのには、全身全霊をもって同意したい。
こっちの一般人の評価も結構面白い。各人各様、その評価は「A+」から「F」まで様々。

まあ、アレだ。日本の芸者の映画ではなくて、JAPANのGEISHAの映画。やっぱり監督が言うとおり、イメージの世界以外の何物でもない。言っただけのことはある。

あんまりけなしてばかりでもアレなんで、誉めることが一つある。映像美。色彩。小道具が正しい正しくないはおいておいて、映像は綺麗だった。そこを評して、★ひとつ!

*  *  *  *  *
みどころ:
・さゆりが無理やり帯を解かれてぐるぐる回る「お戯れをぉ~」シーン
(そういう台詞じゃないけれど)
・ほんのちょっとだけ出てくる舞の海
*  *  *  *  *

鶴八鶴次郎着物が美しいのは、やっぱり日本映画だ。今、NHK BS-2の懐かし映画劇場で生誕100年を記念して「成瀬巳喜男特集」というのをやっている。昨日は「鶴八鶴次郎」(写真)、今日は泉鏡花原作の「歌行燈」だった。話もそれなりに面白いんだけれど、山田五十鈴という女優さんと(写真右)着物の着こなしがステキ。帯がお太鼓であるところを見ると、大正後期以降の時代設定なのか。白黒なんだけれども、是非カラーで観てみたかった。綺麗なんでしょうなぁ。
それに加えて、この間観た「旗本退屈男」シリーズと同じく、一つひとつの所作が美しい。正座で座ってお辞儀をするのとか、本当にうっとりしちゃう。
それから喋り方。どうしてあんなに綺麗に喋れるんだろう。発声方法が違うのかな。声というよりも、その抑揚がなんだかもう非の打ちどころがないような。そう言えば、美智子様もこんな風に喋るっけ。
ああ、これが大和撫子のあるべき姿なのだろうか。私もあんな風になれるんだろうか。

山田五十鈴・・・と、ここまで書いて画像はないものかと調べてみたら驚愕の事実が発覚。山田五十鈴さんって、まだご存命なのね。あまり俳優さんの名前に明るくないものだから知らなかったんだけれども、この人があの可愛い女性だったのか!いやぁ、その、うん。この人ならテレビで見たことが何度もある。そうかそうか、そうだったのか。ああいう可愛い顔は歳をとるとこういう風になるんだな。いや、まだ面影はあるし、上品でいらっしゃいますけれどもね。ハイ。

Comment

またこれで多くの外国人が誤解するんだろうねぇ~。
あ~やだやだ。
  • 2006/02/09 01:43
  • ふくちゃん
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Sayuri、中国では見られないようですが、きっとDVDは出るだろうと思うので(笑 今度見てみるわ。興味有り。

一緒に「恋する惑星」見たよねぇ、銀座テアトルで。bonbonはあっという間にノックアウトされてたけど。私は武のドアップにノックアウトされたわ♪

懐かしいなぁ・・・。
■ふくちゃん
まあ、特に欧米人は、誤解に基づいた幻想とも妄想ともつかない「東洋の神秘」的なものを花柳界に求めているのでしょうね。映画としては、その期待は裏切らない。間違いだらけだから。
相互理解って、難しいよねー。

■檸檬ちゃん
DVDを買う必要すらなさそうな映画よ。でも、興味があるならニセモノでいいかもね。
ええ、あれではあっと言う間に気持ち悪くなったよ。前で見たのがいけなかったんだな。
  • 2006/02/09 12:49
  • bonbon
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原作も読んでないし映画も見てないけど、ま、うちらだって宝塚でベル薔薇やる国ですから、大目にみたげましょうよ。

そうそう山田五十鈴さんって、相当なお年なんでしょうけど、色香がありますね。いいいなあ。
  • 2006/02/10 13:37
  • メラ
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■メラニンさん
あー、ベルバラか。そう言えばそうですね。なるほど。そう思うと、また違った見方ができそうです。
文句ばかり言ってますが、ハリウッドにしては、日本の描写はよくやったなとも思いました。気になったのは、あくまでも細かいところでしたから。それも、日本人だから気になるということであって、日本人以外の観客は、そんなに違和感は感じないと思います。最大の問題が内容の薄っぺらさにあることだけは、誰が見てもほぼ変わりないと思いますが。

山田五十鈴、今さらファンになりました。今年89とか90とかだと思います。私もこんな風な90歳になれたら良いと思います。
  • 2006/02/10 14:31
  • bonbon
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数式が間違ってますよ
(舞妓+芸妓+花魁)÷3=SAYURI にしないと
舞妓 + 芸妓 + 1/3花魁 = SAYURI になっちゃいますよ

とまぁ~ どっちでもいいこと言ってみました
次回はもっと面白いこといいますので遊びにいきましょう!ウキッ
  • 2006/02/13 12:45
  • hiro
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■hiroさん
え?あら、本当だ。でも「花魁1/3」て、確かにそんな感じもしたしなぁ。
どこに遊びにつれてってくれるんです?京都のお茶屋さん?それとも公園とかですか、パパなだけに。
  • 2006/02/14 10:30
  • bonbon
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そうしたら九龍公園へフラミンゴでも見に行こうかっ (今はいない!?) って健全な“パパ”だなぁ~ 笑

さて本題、志蓮浄苑でも行ってみる!? なんにもないけど w
  • 2006/02/14 11:48
  • hiro
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■hiroさん
フラミンゴの池は、今どうやら掃除中でなんにもいません。水も入ってない。鳥インフルエンザのせいかなー?池に近づけないようになってんの。
「志蓮浄苑」って、チョイホンにあるあの大きなお寺?尼寺なんだっけ?行ってみたーい!と常々思っておりましたが、hiroさんと一緒に行ける日や時間帯に、私はこの身が自由になりませんよ。平日の昼間行けるんですか?公園といえば、九龍城跡の公園にも行ってみたいなぁ。
  • 2006/02/14 14:59
  • bonbon
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そうかぁ~ 平日の昼間はパパ仕事だからなぁ
こうやって娘との距離が離れていくんだなぁ シミジミ

てっとりばやく殿の居ない日に飲みにでもいきましょう
(って結局飲みたいだけか・・・)
  • 2006/02/15 09:25
  • hiro
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ちょっとっ、パパ。
そんなところでムスメばかりといちゃついてないで
オムツを替えに戻ってきてっ。
  • 2006/02/15 11:05
  • あずき
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■hiroさん、あずきさん
全く、お母さんのおっしゃるとおりですよ。
ムスメと酒飲んでる暇があったら、赤子に授乳の一つでも…
  • 2006/02/15 11:29
  • bonbon
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うわっ! ママ いつからそこに ・・・・・・

はぁ~い それじゃぁ~ ぼんちゃん オムツを替えましょうねぇ~

あぁ・・・ 俺って一体 ・ ・ ・
  • 2006/02/16 19:28
  • hiro
  • URL
■hiroさん
えーっと、児童相談所(まだ児童のつもりでいるらしい)の電話番号は
どこへやったっけかな…(ごそごそ
そうだ、ついでに警察にも電話しようっと。

こらっ!
父親からの性的虐待に合っている人が万が一これを読んでいたとしたら、
いくらなんでも洒落になりませんよー。
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